日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: W3-3
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ワークショップ3 イオンチャネル型受容体の機能とその毒性学的な意義
皮膚における感覚刺激のメカニズム
*藤田 郁尚
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抄録
私たちは、使用した時に不快な感覚を引き起こさない快適な化粧品を開発するため、感覚刺激の評価方法の確立を試みてきた。最近、温度感受性Transient Receptor Potential (TRP)チャネルが温度受容だけでなく、化学物質による侵害刺激にも重要な働きを示すことが明らかになってきた。その中でも唐辛子の辛み成分であるカプサイシンの受容体であるTRPV1、わさびや芥子の辛み成分であるイソチオシアン酸アリルの受容体であるTRPA1が、特に化学物質による痛み受容に重要な役割を持つ。これまで、皮膚上における感覚刺激へのTRPA1の関与について、様々な刺激要因を対象に研究を続けてきた。化粧品における感覚刺激の標準物質として用いられる防腐剤のパラベン類がTRPA1を活性化させ痛みを引き起こすことを見出してから、ヘアカラーの刺激の大きな原因であるアルカリ剤、化粧品に含まれる一価アルコールと、皮膚上の感覚刺激を引き起こす物質のTRPA1への関与を次々と明らかにしてきた。これと並行して、皮膚上の感覚刺激を軽減するためのTRPA1抑制剤の探索も行い、ユーカリオイルの主成分である1,8-シネオールにTRPA1抑制効果があることを見出した。最近では、皮膚上の冷感覚が外部温度に影響を受ける現象に冷受容体であるTRPM8のチャネル自体の特性が関与すること、つまり、事前暴露温度によってTRPM8の冷閾値が変化し得ることを見出した。これら、これまでの研究内容に、直近の研究成果を含めて報告したい。
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© 2015 日本毒性学会
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