日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: W4-3
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ワークショップ4 薬物性肝障害のスクリーニングに関する最新動向
薬物代謝、炎症・免疫関連因子を考慮した評価系の検討
*横井 毅
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抄録
 薬物代謝酵素による反応性代謝物の生成反応に注目し、実験動物との種差やヒト個人差を考慮した薬物性肝障害 (DILI)予測評価系の構築を目指した研究がなされて来た。しかし、現状では特異体質性と分類される発症頻度の極めて低いDILIを、非臨床試験で予測することは極めて困難であると考えられている。講演では、我々の研究の現況を紹介する。 (1) DILI発症予測のための動物モデルの作出と発症機序について。我々は特異体質性DILIが知られている臨床薬について、野生型マウスへの投与法を工夫することによって肝障害モデルを作出し、その機序解析を行ってきた。その結果、いずれのDILI薬においてもTh17またはTh2細胞の重要な役割が示唆された。こうしたDILIのin vitroおよびin silico予測系の開発のためには、更なるin vivoのデータの集積が必須であり、今後の研究課題であると考えている。免疫・炎症因子の関与におけるマウスとラットの差異についても紹介する。(2) グルクロン酸転移(UGT)酵素によって生成されるアシルグルクロニド (AG)の毒性学的検討。AGは反応性に富み、生体内タンパク質や高分子に共有結合することにより細胞毒性を示すと考えられているが、実際にAGの毒性を直接証明した報告はない。我々は、様々な手法によって細胞毒性と遺伝毒性をin vitroで評価したが、いずれの毒性も検出できなかった。しかし、THP-1細胞やヒト末梢血単核球 (PBMC) 細胞等を用い、AGに対する炎症性因子の発現誘導を示した。また、PBMC中のCD14陽性細胞の生存率がAGによって特異的に低下した。さらに、マウスin vivoにおけるAGの毒性発現の検討結果についても紹介する。(3) DILIの早期バイオマーカーとしてのmiRNA。肝miRNAが肝障害の発症前に変動することで、その発症に関与している可能性を明らかにし、さらに予測系の構築に対する情報を得ることを目的として検討した。ハロタン(HAL)誘導性肝障害マウスにおける検討結果を紹介する。
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© 2015 日本毒性学会
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