日本毒性学会学術年会
第42回日本毒性学会学術年会
セッションID: W5-2
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ワークショップ5 医薬品開発における適切な安全域設定のための多様な試み
病態モデル動物の活用
*高崎 渉
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抄録
医薬品開発を臨床試験ステージに進めるため、非臨床の薬理試験と安全性試験から導かれる安全域をステージアップの判断材料の一つとして用いることは一般的である。この場合、無毒性用量やその曝露量が薬理効果を示すそれらとどれだけ乖離しているかが指標となるが、こうした薬効-毒性の比較のために安全性評価に用いる動物は通常は正常動物である。正常動物における薬物に対する生体反応が患者における反応と同一であるか否かを考える時、もしギャップがあるとすれば、患者における安全性リスクが適切に評価されていないことになる。こうしたギャップを解消する一方策として、非臨床安全性評価に病態モデル動物を用いる試みがあり、患者への外挿性を考慮したより安全性サイドに立脚した考察につながる。 一方で、こうした病態モデルは背景データが十分でなく、安全性を評価する上でのリスク(false positive)が懸念されることから、現時点では未だ標準的な考え方には至っていない。本発表ではケーススタディーとして、骨粗しょう症治療薬評価におけるOVXモデル、糖尿病治療薬評価における肥満モデルなど病態モデル動物を用いた薬理試験において、見出された毒性所見およびその解釈がプロジェクトに与えたインパクトを紹介する。病態モデル動物のhomogeneityが十分でない場合には、安全域を算出することを目的とするのではなく、むしろハザードIDや毒性発現機序の考察などに主眼を置くべきであり、臨床試験におけるリスクマネージメントを考慮した病態モデル動物使用のPros/Consを考える必要がある。また、非臨床薬理試験において適切に薬理効果を示す用量や曝露を求めるためには、毒性を示さない試験デザイン(用量設定、投与頻度・期間など)も考慮されるべきであり、病態モデル動物を用いた薬理試験においても考慮すべき点は多い。
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© 2015 日本毒性学会
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