日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-107
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一般演題 ポスター
イヌにおける自律神経系機能変化を利用した薬物誘発QT延長を検出する新たな方法の開発
*堀 寿子杉本 恭平菅沼 英里香小松 利光塩田 和也平井 亮石井 俊也渡辺 大桑原 正貴
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抄録
[目的]薬物誘発性QT延長は、致死性不整脈などの重篤な副作用を誘発する可能性があり安全性試験においてその評価は重要である。房室ブロック犬モデルなどが開発されているものの、比較的簡便に検出できるイヌのモデルは開発されていない。本実験では、副交感神経系機能の亢進が、心室筋の再分極電流を抑制する可能性が示唆されていることから、自律神経系機能の変化を利用した新たな薬物誘発性QT延長の検出方法について検討した。[方法]ビーグル犬雌雄各3頭を使用した。JETシステム(DSI Inc.)を用いて第Ⅱ誘導心電図を記録できるようにした後、メデトミジン(α2アドレナリン受容体作動薬:20 μg/kg, i.m.)及びE-4031(IKr遮断薬E-4031 n水和物:0.1 mg/kg, i.v.)を単独あるいは併用投与した。得られた心電図からQT間隔を測定すると共に心拍変動解析(株式会社ソフトロン)を行い、HF(高周波数成分)、LF(低周波数成分)およびLF/HF比を測定した。[結果]メデトミジン+E-4031投与時のQT間隔は、何れの動物でも単独投与に比べて有意に延長した。併用投与することにより投与開始直後から期外収縮などの不整脈が認められ、その発現頻度は投与30分後付近で最も高く、投与1時間後にはほぼ消失した。また、心拍変動解析の結果、メデトミジン単独投与及び併用投与時のHFは無処置時と比較して高値を示し、LF/HF比は低値を示した。[考察]メデトミジンの投与により副交感神経系機能が亢進するために心拍数は減少し、そのような状況においてIKr遮断薬を投与するとIKr遮断薬の単独投与時よりもQT間隔が有意に延長することが明らかとなった。本法は、メデトミジンの前投与を行うだけで比較的簡単に自律神経系機能を変化させることにより薬物誘発性QT延長を高感度に検出できる有用な方法であると考えられた。
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© 2016 日本毒性学会
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