日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-108
会議情報

一般演題 ポスター
ヒト造血系hIL-3/GM-CSF Tg NOGマウスを用いた殺細胞性抗がん剤のヒト骨髄毒性評価系の確立
*長井 大地中嶋 直子奥田 祐司市村 英資伊藤 亮治片野 いくみ伊藤 守岡本 一也河城 孝史
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
顆粒球減少などを誘発する骨髄毒性は,殺細胞性抗がん剤に共通した副作用であり,多くの薬剤で用量制限因子となっている.この骨髄毒性は,通常,非臨床試験で実験動物を用いて評価されるが,骨髄細胞の感受性や障害から回復までの期間などにヒトと大きな相違が見られることがある.そのため,ヒトと同等の骨髄毒性感受性を示し,変動推移を評価できる動物モデルの構築は,開発化合物の選択並びに臨床試験に先駆けての副作用対策に極めて有用である.重度免疫不全動物であるNOGマウスは,異種細胞の生着効率が極めて高く,ヒト造血幹細胞を移植することで,マウス体内でリンパ球主体のヒト造血環境を再構築できるヒト化マウスとして汎用されている.最近我々は,ヒトIL-3及びGM-CSF遺伝子を導入したNOGマウス(hIL-3/GM Tg NOG)を作製し,ヒトリンパ球と共に成熟ヒト顆粒球が分化するヒト造血系マウスを開発した.本研究では,このヒト造血系hIL-3/GM Tg NOGマウスを用いて,ヒト顆粒球変動を指標とした殺細胞性抗がん剤のin vivoヒト骨髄毒性評価モデルの確立を試みた.
骨髄毒性を評価する薬剤には,顆粒球減少を誘発することが知られている代表的な殺細胞性抗がん剤(タキサン系,カンプトテシン系,プラチナ系など)の中から,in vitroにおけるヒトとマウスの骨髄毒性感受性が同程度の薬剤,ヒトで感受性の高い薬剤,マウスで感受性の高い薬剤を選択して用いた.各薬剤をヒト造血系 hIL-3/GM Tg NOGマウスに単回投与した後,末梢血中のヒト及びマウス顆粒球をフローサイトメトリーで経時的に解析し,感受性差及び変動推移について評価した.
本検討結果から,ヒト造血系hIL-3/GM Tg NOGマウスは,マウス体内で分化維持されるヒト由来顆粒球とマウス由来顆粒球に対する薬剤応答性を同時に解析することが可能であり,殺細胞性抗がん剤の臨床予見性の高い骨髄毒性評価モデルとして有用であることが示唆された.
著者関連情報
© 2016 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top