抄録
疫学的研究や動物モデルを用いた検討から、脂肪の過剰摂取や肥満は発がんのリスク要因であることが示唆されている。しかし、その発がん促進メカニズムの詳細は未だ不明な点が多く、特に発がんイニシーション期における役割は明らかになっていない。これまでに我々は、gpt deltaラットを用いて2-amino-3-methylimidazo[4,5-f]quinolone (IQ)または2-amino-3,8-dimethylimadazo[4,5-f]quinoxaline (MeIQx)と高脂肪食の併用投与を行い、遺伝毒性発がん物質のin vivo変異原性に対する高脂肪食摂取の影響を検討したところ、4週間の高脂肪食の摂取はヘテロサイクリックアミンのラット肝臓おけるin vivo変異原性に影響を与えないことを明らかにした。そこで今回、より長期間にわたる高脂肪食摂取がヘテロサイクリックアミンのin vivo変異原性に与える影響を検索した。6週齢雄C57BL系gpt deltaマウスにそれぞれ実験開始0、8、12または16週目から高脂肪食を与え、20週目に実験を終了した。実験終了4週前よりMeIQxを0.9 mg/マウス/日の用量で強制経口投与した。MeIQx非投与群には基礎食または高脂肪食を与えた。投与終了後、肝臓のレポーター遺伝子突然変異頻度解析を行った。高脂肪食群の体重は高脂肪食投与時から増加し、最終体重は基礎食群に比して有意に上昇した。高脂肪食群の相対肝重量は、高脂肪食投与期間依存的に増加する傾向が認められ、高脂肪食を20週間与えた群では、MeIQx投与の有無に関わらずそれぞれ対応する基礎食群に比して有意に増加した。今後、肝臓におけるgptおよびSpi-変異体頻度を検索し、高脂肪食摂取の期間および肥満の程度がMeIQxのin vivo変異原性に与える影響を明らかにする。