日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-95
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一般演題 ポスター
生活関連化学物質のヒト健康および環境影響に関するリスクアセスメント-藻類毒性メカニズムに基づくアルキルジメチルアミンオキシドの環境影響評価-
*舞原 文女本多 泰揮山根 雅之森田 修
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抄録
国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿って化学物質を適正に管理するためには、化学物質の有害性と暴露を定量的に評価し、ヒト健康と環境影響に関するリスクを科学的に解析することが重要である。
アルキルジメチルアミンオキシド(AO)は洗浄力や起泡力に優れた両性界面活性剤であり、家庭用洗浄剤に広く配合されている。AOの生分解性は良好であるが、藻類に対する毒性が魚類・甲殻類に比べて強いことが知られており、生態影響の観点から化審法優先評価化学物質として国による環境影響評価が実施されている。AO配合の家庭用洗浄剤は、使用後にその大部分が家庭排水として汚水処理施設を経由して公共用水域(主に河川)に排出されることから、環境リスクアセスメントには実環境の暴露実態把握と藻類毒性メカニズム解析に基づく環境影響評価が重要と考えられる。
そこでまず、実環境の暴露実態の把握に、全国規模の環境濃度の予測が可能な水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL、以下SHANEL)を用い、河川水推算濃度と環境モニタリングデータの一致性について評価した。その結果、推算値と実測値の一致率は概ね0.1~10の範囲にあり、SHANELによるAO河川水推算濃度が実環境を反映していることを明らかにした。一方、藻類毒性メカニズムに関してはAO暴露により藻類の光合成色素合成に係わる酵素が競合的に阻害され、光合成色素と前駆体がAO濃度依存的に減少することが原因であることを明らかにした。
以上、全国を対象としたSHANELによるAO予測環境濃度(PECwater:0.28 μg/L)が藻類毒性メカニズム解析で明らかとなった光合成阻害を誘発する最低濃度(114 μg/L)に比べて低いことから、実環境においてAOが藻類生長に影響を及ぼすリスクは低いことが示唆された。
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