日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S16-3
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シンポジウム16 UGT研究の最前線~食品から医薬品、動物からヒトまで~
医薬品感受性・毒性の個人差とUGT
*中島 美紀
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抄録
 臨床で使用されている医薬品の約30%がグルクロン酸抱合を受けることで体内から消失する。グルクロン酸抱合は一般には解毒反応と捉えられるが、カルボン酸含有化合物から生じるアシルグルクロニドは反応性が高いことから毒性の原因と考えられている。すなわち、UGTによる代謝反応は医薬品感受性および毒性を左右する要因となり得る。アシルグルクロニドの毒性について、さまざまなin vitro評価法が検討されているが、アシルグルクロニドが毒性本体であることをin vivoで証明した研究はない。演者らは、新規加水分解酵素ABHD10がアシルグルクロニドを加水分解することを見出している1)。ヒト肝ミクロソームにおいて、アシルグルクロニドの生成反応よりも、その加水分解反応の方が早い医薬品もあることから、アシルグルクロニドの毒性評価においてはUGTのみならず、加水分解酵素も考慮する必要性が示唆された。アシルグルクロニドの毒性について加水分解反応を考慮しつつin vivoで評価した取り組みについて紹介する。
 ヒト組織中の各UGT分子種の発現量について、qRT-PCRによるmRNAレベルでの検討に加えてLC-MS/MSによるタンパク質レベルでの定量的評価が可能となり、情報が蓄積されてきている2)。分子種によっては、mRNA発現量とタンパク質発現量との間に正の相関関係が認められず、転写後調節の関与が示唆されている。近年、ヒトUGT1AおよびUGT2Bの発現調節にmicroRNAが関わっていることが明らかになり、発現量における個人差の要因となることが示された。本シンポジウムでは、演者らの研究成果を含め、医薬品感受性・毒性の観点からUGTの個人差について概説する。

1) Iwamura et al., J. Biol. Chem., 287: 9240-9, 2012.
2) Oda e al., Drug Metab. Pharmacokinet., 30: 30-51, 2015.
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© 2016 日本毒性学会
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