日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: S19-5
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シンポジウム19 カドミウム研究の新たな展開 -疫学から分子機構まで-
遺伝子発現抑制を介したカドミウム毒性発現機構
*李 辰竜徳本 真紀佐藤 雅彦
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抄録
カドミウム(Cd)は、腎近位尿細管障害を主症状とする腎毒性を引き起こす。Cdによる腎近位尿細管障害には様々な遺伝子の発現破綻が関与しているが、Cdの標的転写因子はほとんど明らかにされていない。我々は、ラットおよびヒト由来の腎近位尿細管上皮細胞を用いて、Cd毒性発現に関与する新たな転写因子を網羅的スクリーニング法(Protein-DNAアレイ)で検討した。その結果、Cdによって転写活性が低下する因子のうち、YY1、FOXF1およびARNTが含まれ、それらの下流経路とCd毒性との関係を調べた。これまでに、Cdによるユビキチンプロテアソームシステム関連因子、UBE2D2UBE2D4遺伝子の発現抑制がアポトーシスに起因していることを明らかにしてきたが、CdによるUBE2D2の発現抑制にはYY1転写因子が、UBE2D4の発現抑制にはFOXF1が深く関与していることが見いだされた。また、ARNT転写因子の下流因子のうち、 BIRC3遺伝子がCdによって発現抑制され、ARNTを介していることが明らかとなった。BIRC3はIAP(inhibitor of apoptosis protein)ファミリーに属するタンパク質であり、アポトーシス抑制作用を有することが知られている。しかも、BIRC3のノックダウンによって細胞生存率の低下と、アポトーシスの誘導が示されるとともに、BIRC3のノックダウンによってCd毒性も増強された。以上の結果より、YY1、FOXF1およびARNT転写因子がCd標的転写因子として新たに同定され、それらの下流因子であるUBE2D2UBE2D4およびBIRC3遺伝子発現抑制が細胞毒性を引き起こすことが明らかとなった。
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© 2016 日本毒性学会
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