抄録
ICH S1がん原性試験ガイドライン改定にむけた前向き評価の開始後27カ月を経た昨年の12月に、米国ジャクソンビルにおいて対面会合が開催された。会合では、それまでに企業から提出され、日米EUおよびヘルスカナダ(2014年7月受領分より)の各規制当局で個別に審査された後、電話会議で協議された25件のがん原性評価文書(CAD)に対する規制当局の評価について討議された。
25件のCADの内、「ラットに発がん性があるが、ヒトに外挿できないと予測される」あるいは「ラット及びヒトに発がん性なしと予測される」として、それぞれカテゴリー3aまたは3bに分類されるCADを提出者は16件(全体の64%)としていた。全規制当局が一致してカテゴリー3としたものは6件(37.5%)で、一部の規制当局のみがカテゴリー3としたものは3件(18.8%)であり、規制当局の全体または一部がカテゴリー3としたものは9件(56.3%)あった。いずれの規制当局も同意できないとされたCADは7件であり、これらは「ヒトに対する発がん性不明と予測される」ため、がん原性試験の実施が必要であるカテゴリー2と評価された。
提出者と規制当局間でカテゴリー3の見解が分かれた要因としては、記載情報が不十分とみなされる場合、考察に対する科学的見解に相違がある場合があげられ、ファーストインクラスの場合は文献考察を含めたより詳細な説明が必要と考えられた。
CADの件数が到達目標に達しておらず、また、2年間がん原性試験の結果が得られていない現段階での、この証拠の重み付けによる評価の意義を解析するのは時期尚早であるが、今後、CADの記載において不十分とされた情報の再提出を企業に求めることが同意されており、カテゴリー3と同意されるCAD数の増加が期待されている。また、2年間がん原性試験結果の提出により、CADの評価との比較が開始され、改定に向けた知見が得られるものと考える。