日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-9
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一般演題 口演
毛髪中ミネラル濃度と疾病ならびに生活習慣との関連性
*川﨑 直人緒方 文彦山城 海渡
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抄録
【目的】我が国では,健康増進や生活習慣病発症の予防を主な目的とし,食事摂取基準が策定されている。ミネラルは,多量ミネラル5種類と微量ミネラル8種類が対象となっている。生体中のミネラルの役割は多岐にわたっており,バランスよく摂取することが重要である。一方,毛髪は大部分がタンパク質であるケラチンから成り,ミネラルが排泄されるため,体内のミネラルの状態を正確に反映すると考えられている。本研究では,生活習慣病の予防などに関する知見を得ることを目的とし,ヒトの毛髪中におけるミネラル濃度を測定し,疾病や生活習慣に関するアンケート調査の結果との関連性について検討した。
【方法】本研究は近畿大学薬学部倫理委員会の承認に基づき実施された。内容を説明し,同意が得られた場合,同意書と生活習慣及び疾病に関するアンケートを記入後,毛髪を採取した。対象者は男性185名,女性398名であった。毛髪中ミネラル濃度は,前処理し,酸で溶解後,誘導結合プラズマ質量分析装置(島津ICPM-8500)を用いて定量した。毛髪中ミネラル濃度とアンケートとの関連性はJMP ver. 11(SAS Institute Inc.)により名義ロジスティック回帰分析を行い,有意水準はp<0.05とした。
【結果・考察】血圧,血糖値,喫煙,肥満,運動及び脱毛の項目で「はい」と回答した男性の割合は,女性に比べて有意に高くなった。一方,貧血,骨密度,もの忘れ及び創傷治癒遅延の項目で「はい」と回答した男性の割合は,女性に比べて有意に低くなった。アンケート調査の結果と毛髪中のミネラル濃度と関連性とし,男性において,肥満の項目で「はい」と回答した人ほどセレン濃度が有意に低く,花粉症の項目で「はい」と回答した人ほどカドミウム濃度が有意に高くなった。一方,女性において,花粉症の項目で「はい」と回答した人ほどカルシウム濃度が有意に低くなった。以上の結果から,特定の毛髪中ミネラル濃度を定期的に測定することにより,健康への意識を向上させることにより,疾病予防に寄与できる可能性が示唆された。
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© 2017 日本毒性学会
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