日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-269
会議情報

一般演題 ポスター
ラット小脳由来アストロサイトのジフェニルアルシン酸、フェニルメチルアルシン酸、およびジメチルアルシン酸による異常活性化における構造毒性相関
*根岸 隆之松本 真実小岩 優美子石田 貴啓山田 怜奈住吉 信尚金 俊孝佐々木 翔斗髙木 梓弓柴田 朋香大石 悠稀吉田 謙二湯川 和典
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 ジフェニルアルシン酸(DPAA)は五価の有機ヒ素化合物であり、急性毒性は比較的低いとされている。しかしながら、土壌に漏出したDPAAに汚染された井戸水を生活用水としていた住民が小脳症状を主とする神経症状を発症するという事故が発生した。その症状は原因判明後井戸水の使用を中止してもなお続いた。我々はこれまでにDPAAによる神経症状発症メカニズムの解明を目指し研究を行い、DPAAは小脳アストロサイトにおいて細胞増殖促進やMAPキナーゼ(p38MAPK、SAPK/JNK、ERK1/2)の活性化といった細胞生物学的異常活性化を引き起こすことを明らかにしてきた。本研究ではDPAAに加えてDPAAのフェニル基の一つをメチル基に置換したフェニルメチルアルシン酸(PMAA)と生体内における無機ヒ素の代謝産物であるジメチルアルシン酸(DMAA)の影響を評価し構造毒性相関解析を試みた。DPAAは濃度・時間依存性に一過性の細胞増殖とつづく細胞死を引き起こし、ばく露96時間後においては10μM程度で細胞増殖とより高濃度(50μM ≤)で細胞死を引き起こした。一方でPMAAはDPAAと異なり、ばく露後96時間において、10μM程度の濃度で細胞生存率の減少がみられたが50μMではその効果はみられず、さらに高濃度(100μM)では顕著な細胞死がみられた。DMAAはばく露後、細胞増殖促進効果も細胞毒性もみられなかった。また、MAPキナーゼの活性化については、DPAAが最も活性が高く、ついでPMAAがわずかに活性をみせた一方、DMAAは全くアストロサイトを活性化しなかった。以上の結果から、DPAAが有する二つのフェニル基がDPAAに特徴的な生物学的影響の表現型に重要であり、生体内等でメチル基に置換されるとその活性が著しく減弱すると考えられる。

著者関連情報
© 2017 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top