日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: SL4
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特別講演
げっ歯類による経胎盤・継世代影響の研究の成果の検証と、ヒトへの外挿の問題点の克服への提言
*野村 大成
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抄録
 放射線や化学物質の被曝が、がん等障害を引き起こすことはよく知られている。また、胎児期(子宮内)被曝によっても、生まれた子供には、より早期にがんが発生することが、実験動物(マウス、ラット)だけでなくヒトにおいても確認されている。親の被曝によって、子孫に遺伝的影響-突然変異等-が発生することは、膨大な数のマウスを用いて証明された(通称“100万匹マウス実験”等)。さらに、親の被曝により子孫にがんや形態異常のようなヒトにもよく見られる疾病が発生することもマウス、ラットだけでなく魚類でも報告されている(マウス実験は“大阪レポート”と呼ばれる)。ヒトにおいても、放射線被曝(診断用X線被曝、核実験、原発事故被曝等)により、次世代にがん、形態異常や突然変異の発生に関する論文報告もあるが、広島・長崎被爆者の子供においては、近距離被爆(<2.0Km)と遠距離被曝(>2.5Km)群の間(外部被ばく線量0.01Gy以上と未満)での障害発生の差が明らかにされていないのが現状である。
 本学会特別講演においては、50年にわたるマウスを用いた研究の経験から、「放射線や化学物質の継世代影響」の特徴(生殖細胞発育過程での感受性の違い、線量・線量率効果、マウス系統差、次世代影響の遺伝性、生後環境因子との複合効果、遺伝的不安定性の誘発と蓄積、等)を紹介し、種々の疑問点についての検証を行う。また、ヒトへの外挿の問題点の克服のため、これまでのヒト被曝集団での被曝形態等に検討を加え、マウス実験成果からの検証を行うとともに、チェルノブイリ原発事故以来、ロシア連邦小児放射線防護研究センターの所有する膨大な継世代的影響調査(被曝兵士50万人の子孫、高濃度汚染地域住民の子孫10万人における次世代影響)と基盤研・大阪大学における継世代影響研究に関する日ロ国際交流事業について紹介し、未来世代への障害防護について提言できればと思う。
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© 2017 日本毒性学会
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