日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-144
会議情報

一般演題 ポスター
キトサンオリゴ糖を用いたN-メチル-N-ニトロソ尿素誘発ラット網膜変性症の抑制効果
*義澤 克彦竹之内 明子榎本 祐子木下 勇一結城 美智子圦 貴司岡本 芳晴
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 網膜色素変性症(RP)は最終的に失明を来す代表的な眼科疾患で根本的な治療はなく、この病態の理解と治療法の開発が必要である。今回、カニやエビなどの甲羅・殻に含まれる抗酸化物質であるキトサンオリゴ糖(COS)について、N-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)誘発ラット網膜変性症の抑制効果を検証した。

 7週齢の雌SDラットに40mg/kg MNUを単回腹腔内投与した。MNU投与7日前から1、4、8%COS水を飲水投与し、MNU投与後6、12、24、72時間および7日に眼球の組織標本を作製し、網膜厚による視細胞比率並びに網膜障害率を算出した。さらに網膜の視細胞死(TUNEL、γH2AX)、網膜機能保持率(PDE6β)、酸化障害(HO-1、TG)の有無について免疫組織学的に検証した。

 7日後ではMNU単独群に比べて4%COS併用群で中心部網膜の視細胞比率が有意に高かった。一方、8%COS併用群では網膜視細胞比率が有意に減少し増悪化がみられた。網膜障害率はMNU単独群に比べて4%COS併用群で有意に軽減したが、8%COS併用群では増悪化した。12あるいは24時間のCOS併用群でTUNEL陽性細胞数、γH2AX、HO-1及びTG陽性細胞の出現が軽減した。7日後のPDE6β保持率は、COS併用群で有意に高値を示した。

 以上の結果から、4%COS投与によってMNU誘発の視細胞アポトーシスを構造的・機能的に抑制し、その抑制効果は網膜での酸化ストレス抑制が関与していることが示唆された。8%COS投与群は体重減少が顕著であり、全身性ストレスが網膜障害の増悪化に関連したものと推察された。適切なCOSの投与量を用いることにより、RPの発症や進行の改善に役立つ可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2018 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top