Benzonatate(TESSALON®)は末梢で作用する非麻薬性の経口鎮咳薬であり、局所麻酔薬のプロカインと構造的に類似したエステル型麻酔薬である(日本未承認)。Benzonatateは、局所麻酔作用により肺伸展受容器を介した咳反射を抑制すると考えられており、体内でエステラーゼにより主代謝物の4-ブチルアミノ安息香酸(BBA)に速やかに代謝される。今回、雌雄Crl:CD(SD)ラットを用いてBenzonatateの受胎能及び着床までの初期胚発生に対する影響を評価した。合計4群(25-28匹/性)を設定し、雄は交配前28日から交配期間中を通して交配終了まで、雌は交配開始前15日から妊娠7日まで1日1回強制経口投与した。投与用量は雄では0(溶媒対照)、100、200及び400mg/kg/日、雌では0、100、200及び400/300mg/kg/日(死亡例に伴い用量を変更)とし、投与容量は10mL/kgとした。雄は交配後に安楽殺した。雌は妊娠13日に安楽殺して帝王切開を行った。雌の高用量群で28匹中11匹に死亡が認められた。高用量群では、反応過敏(雌雄)、間代性痙攣、喘ぎ呼吸、自発運動の亢進、運動失調、呼吸困難及び自発運動の低下(雌)が認められた。体重、増体量、絶対及び相対摂餌量に有意な変化はなかった。いずれの用量でも発情周期、交配及び生殖能に影響はなく、投与に関連した剖検所見はみられなかった。精巣上体、精巣上体尾部、精巣、精嚢、前立腺の絶対及び相対重量は、全ての投与群で対照群と差はみられなかった。精子検査、雌性生殖指標、胚の生存に影響はみられなかった。雄及び雌ラット(母体)に対するNOAELはそれぞれ400及び200 mg/kg/日、雄及び雌ラットの生殖能に対するNOAELはそれぞれ400及び300 mg/kg/日であった。雄及び雌ラットにそれぞれ400及び300mg/kg/日までの用量で経口投与した結果、交配または受胎能に有意な影響は認められなかった。本研究は米国食品医薬品局(FDA)の要請により実施したものである。