現在アセチルコリンエステラーゼ(AChE)を標的とする医薬品や農薬類は数多く、それらによる副作用や有害作用の例は少なくない。我が国においては、神経毒ガスサリンを用いた大事件も発生し、当時暴露された方々の後遺症などに関して、本学会でのシンポジウムでも取り上げられた。一方、ACh受容体を標的とするネオニコチノイド系農薬が開発され、ヒトへの安全性が高いとされ、広く用いられている。AChE阻害薬は、医薬品として高齢者に使用される頻度が高く、一方農薬としてのACh関連酵素や受容体作用物質は環境中へ排出され、乳幼児等への曝露による高度中枢機能など発達への影響が懸念されている。コリン作動性の化学物質の基礎と臨床の現状を整理し、議論を進め、医薬品や農薬の抱える問題点を共有したく本合同シンポジウムを企画した。
本シンポジウムでは、現在実際にAChE阻害薬や受容体作動薬に関して基礎や応用研究されている研究者3名と救急医療現場でAChE阻害薬中毒によるコリン作動性クリーゼの実態を直接経験されている1名の医学研究者に話題提供をお願いしている。コリン作動性の医薬品や農薬等の包括的な理解が深まることを期待する。