日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-6
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一般演題 口演
1,2-DCP曝露による胆管がん誘導メカニズムにおけるマクロファージを介したDNA二重鎖切断
*滝澤 亮哉宗 才木下 和生櫻井 敏博市原 佐保子市原 学
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抄録

【目的】1,2-Dichloropropane(1,2-DCP)は、揮発性の有機溶剤であり、インクの除去剤や金属の洗浄剤として使用されている。2014年に塩素系有機溶剤を使用していた大阪のオフセット校正印刷工場で、従業員が高い頻度で胆管がんを発症していることが報告された。そのため、1,2-DCPは職業性胆管がんの原因物質であると考えられている。本胆管がんは肝外胆管がん、肝内胆管がんを含むとともに、大きな胆管由来である。また、胆管上皮内新生物、管内乳頭新生物、線維化などの非特異的胆管傷害が胆管の様々な部位で存在するとともに、上皮下に炎症性細胞の浸潤が観察されている。さらに、これらの病変とともにDNA二重鎖切断マーカーであるγH2AXの発現も観察されている。一方、本胆管がんのうち4例の全エクソーム解析では特異的な変異パターンが観察され、activation-induced cytidine deaminase (AID)の関与が疑われた。我々のIn Vitro実験においても1,2-DCPへの曝露がマクロファージからのTNFα分泌の誘導と胆管上皮細胞における異所性のAID発現を誘導すること、さらにコメットアッセイではマクロファージを介したDNA損傷の増強が観察されている。我々は1,2-DCP曝露によるDNA二重鎖切断が1,2-DCPによる直接作用によるものか、あるいは炎症などによるものであるかを明らかにするために、In Vitroでヒト胆管上皮細胞とマクロファージの共培養系を用い、職業性胆管がんのモデルを再現し、確認を行った。

【方法】ヒト不死化胆管由来細胞株(MMNK-1細胞)とTHP-1マクロファージの共培養を行い、様々な濃度の1,2-DCPを曝露し、γH2AXの発現を免疫蛍光染色で確認した。

【結果・考察】Insertを介した共培養群と介さない共培養群を比較した時、Insertを介さない共培養でγH2AXの発現が亢進した。このことから、マクロファージと胆管上皮細胞の接触がDNA二重鎖切断の発生に深く関わっている可能性があると考えられる。

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