化学物質の毒性や発がん性を検証する際には動物モデルを用いたin vivoでの評価が必要である。しかしながら、化学物質への感受性には種差が存在し、動物とヒトに対する影響は必ずしも一致しない。近年、機能性のヒト化肝臓を有するヒト化マウスが開発され、in vivoでヒトに近い薬物代謝を評価できるモデルとして期待されている。ヒト化肝マウスを用いることで、化学物質の毒性や発がん性に関してもヒト生体内に近い状態で観察可能となると考えられる。そこで、ヒトとマウスで肝毒性や発がん性が異なる物質であるアフラトキシンB1(AFB1)を、マウス肝領域とヒト肝領域の両者を有するキメラ化したヒト化肝マウスに投与し、短期での毒性を評価した。
キメラ化したヒト化TK-NOGマウス19匹と無処置のTK-NOGマウス20匹を用いた(実験動物中央研究所)。それぞれAFB1を0,30,60mg/kgBwの濃度で腹腔内に単回投与して24時間後に解剖を行い、血清のAST、ALTを測定し、肝臓の病理組織学的検索を行った。
ヒト化TK-NOGマウスではAFB1投与群で濃度依存性にAST、ALTの上昇がみられたが、無処置のTK-NOGマウスではAFB1投与によるAST、ALTの上昇はみられなかった。また、AFB1を投与したヒト化TK-NOGマウスではヒト肝領域でアポトーシスや壊死が散見されたが、マウス肝領域ではそれらの像は観察されなかった。一方、無処置のTK-NOGマウスではAFB1投与によるアポトーシスや壊死は認められなかった。
AFB1を投与したヒト化肝マウスでは、ヒト肝領域に特異的に障害が誘発され、マウス肝領域に傷害はみられず、AFB1に対するヒトとマウスの感受性の違いを反映しているものと考えられた。ヒト化肝マウスはin vivoで化学物質のヒトへの毒性を評価できるモデルとなることが期待される。