大気汚染は、世界中で広範囲に及ぶ曝露を伴う人間の有害物質である。東アジアではばく露が増え続けている。中でもPM2.5をはじめとするディーゼル微粒子は、WHO-IARCにおいて、ヒトに発がん性を示す可能性があるとのハザード評価が行われた。さらに、WHO-IARCでは、発がん物質を生化学的な応答性メカニズムに応じて鍵となる特徴Key Characteristics (KC)の10種類に分類し、ハザード評価の判断材料として提案している。一方、癌の発生メカニズムもHallmark Cancerとして8-10種類(段階)のメカニズムが提唱されている。そこで、今回、PM2.5中に含まれる低分子について、毒性情報を収集し、これらの低分子が肺がん発生に寄与する可能性について、発がんメカニズムのAOPを構築する観点から解析を行った。その結果、発がん物質の様々な重要な特性に関連するKCにおいては、DNA付加体レベルの寄与率が最も高く、炎症や酸化ストレスは、二次的な寄与であることが示唆された。この結果は、発がんメカニズムのAOPの構築には、DNA付加体形成などのエンドポイントを使用した生物学的モニタリングのデータが有用である可能性を示した。