【目的】近年、ペットも高齢化が進み、それに伴いガンの罹患率も上昇している。抗がん剤治療はヒトと同様にペットにおいても消化管障害や骨髄抑制などの副作用を引き起こし、これらの副作用を軽減することが重要である。そこで、ヒトにおいて食欲不振などに対する果があり、マウスにおいて、ある種の抗がん剤による骨髄抑制を低減することが認められている十全大補湯という漢方薬に着目し、抗がん剤の一種であるビンクリスチンによる消化管毒性などの副作用に対する低減効果をイヌにおいて検討した。
【材料と方法】本試験ではビーグル犬(雌5頭、3歳)に対して①十全大補湯の単剤投与、②ビンクリスチンの単剤投与、③十全大補湯とビンクリスチンの併用投与の3試験を行った。①の試験では、十全大補湯4.5 g/day/bodyで3週間経口投与し、腹部超音波エコーにより胃の動きを観察し、Motility Index (MI)値の算出し、採血により血液検査を行った。②の試験では、ビンクリスチンを0.75 mg/m2静脈投与した日を1日目とし、0~6日目にMI値の計測、血液検査、一般状態の観察を行った。③の試験ではビンクリスチン0.75 mg/m2静脈投与した日を1日目とし、十全大補湯4.5 g/day/bodyの経口投与を‐7~6日目まで行い、‐7~6日目までMI値の計測、血液検査、一般状態の観察を行い、これらの結果を比較した。
【結果・考察】十全大補湯の単剤投与においてはMI値の有意な上昇がみられた。ビンクリスチン単剤投与と十全大補湯とビンクリスチンの併用投与を比較した場合、単剤投与ではMI値の有意な低下がみられたが併用投与ではMI値は低下せず、十全大補湯投与によりビンクリスチンによる胃運動抑制が低減されたものと考えられる。本研究結果から、今後は、十全大補湯を抗がん剤治療により胃の運動率が低下しているイヌに対して臨床応用することが期待できる。