日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-103
会議情報

ポスターセッション
F344ラットにおけるVGCF®-Hの気管内投与による13週間毒性試験
*沼野 琢旬樋口 仁美杉山 大揮宇田 一成池田 和子小川 良二佐藤 敬伴野 富美子西岡 綾子萩原 雄二福井 浩子米田 正津田 洋幸
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景・目的】

 多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は、優れた物理化学特性を持ち、リチウムイオン電池等、様々な製品に用いられている。しかし、針状・繊維状構造を有するため、肺に有害性を引き起こす可能性が懸念されている。MWCNTの1つであるMWNT-7については、ラットを用いた全身吸入暴露によるがん原性試験により肺腫瘍発生の増加が報告されている。気管内投与法は、全身吸入暴露と比較し簡便且つ安価に実施が可能であり、全身吸入暴露の代替法として肺を中心とする臓器の有害性評価に用いられている。本実験では気相法炭素繊維VGCF-Hの肺有害性の評価を目的として、気管内投与法による13週間毒性試験を実施した。

【材料・方法】

 10週齢の雌雄F344/DuCrlCrlj系ラットを用い、被験物質としてKolliphor P188/saline系媒体に懸濁させたVGCF-Hを0.2, 0.4及び0.8 mg/kgの用量で、MWNT-7及びアスベスト(Crocidolite)を0.4及び0.8 mg/kgの用量で、週に1回、合計8回気管内投与した。また、無処置群及び媒体投与群を設けた。

 一般状態の観察、体重及び摂餌量の測定を行い、投与開始13週経過後に剖検して、肉眼的病理学的検査、臓器重量、肺胞洗浄液(BALF)の検査及び病理組織学的検査を行った。

【結果・まとめ】

 肉眼的に肺、気管及び縦隔リンパ節に被験物質の色に起因する変化がみられた。器官重量、BALF検査並びに病理組織学的検査において、VGCF-H, MWNT-7及びCrocidolite投与群に炎症性変化がみられたが、その程度はMWNT-7投与群が顕著に大であった。以上のことからVGCF-Hの肺有害性の程度はMWNT-7と比較して軽度であることが明らかとなった。

著者関連情報
© 2019 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top