日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-149
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ポスターセッション
イヌ網膜障害バイオマーカーとしてのmiRNA利活用の検討
*藤澤 希望松下 智哉金丸 千沙子竹藤 順子池上 仁鈴木 弘美
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抄録

【背景・目的】開発中の医薬品候補化合物が網膜を障害する報告は多数あり,網膜障害が原因で開発を中止するケースも少なくない。網膜障害をモニターする方法として,Electroretinogram (ERG)やOcular coherence tomography (OCT)が用いられるが,侵襲性,コスト,実施可能施設などが課題となっている。近年,ラットにおける網膜障害バイオマーカーとして血中miRNAの有用性が報告されている。そこで本研究では,ヒト網膜疾患の外挿性がより高いモデル動物として知られるイヌを用い,将来的に毒性試験に血中miRNAを組み込むことを目的として,ラットで既報の血中miR-124及びmiR-183の網膜障害バイオマーカーとしての有用性を検討した。【方法】〔実験①〕無処置のMarshall Beagle (7-9か月齢,雌雄各1例)から採取した47組織及び血清,血漿からtotal RNAを抽出し,RT-qPCRにてmiR-124及びmiR-183の発現量を測定した。〔実験②〕8-10か月齢のMarshall Beagle (雄,n=3)に網膜障害を引き起こす化合物(HSP90阻害剤)を15日間経口反復投与し,ERG, OCT, 病理組織学的検査及び血中miRNA測定を実施した。【結果・考察】〔実験①〕miR-124は小脳,網膜,大動脈,miR-183は網膜に特異性高く発現していた。〔実験②〕HSP90阻害剤投与群では,ERG (投与開始4日目(Day 4)から杆体応答の潜時の延長傾向,Day 9から明らかな振幅の減少及び潜時延長), OCT (Day 9から視細胞層の不整), 病理組織学的検査(網膜外顆粒層の核密度減少及び視細胞の単細胞壊死)において全例で網膜の異常が認められた。一方,miR-124はDay 3, 15で有意に増加し,miR-183はDay 3で増加傾向にあったことから,網膜障害を反映した変化である可能性が考えられた。今後,血中miRNAを毒性試験に組み込むにあたっては測定法・解析法に最適化が必要であり,これら課題についても議論させて頂きたい。

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