【背景】抗がん剤開発においてしばしば消化管が毒性標的となるが、消化管障害特異的バイオマーカーは少ない。ヒトにおけるクローン病などでは、診断マーカーとして、尿中lactulose/mannitol比が用いられており、これらのSugar probeが実験動物における消化管障害マーカーとして有用であるかどうかを検証した。
【方法】雄性SDラットにsugar probe mix (mannitol, lactulose, sucrose, sucralose)を経口投与し、代謝ケージにて24時間絶食・自由給水下で採尿し、Pre値とした。抗がん剤である、topotecan反復投与(0.5/1.0 mg/kg/day, 5days)により消化管障害を誘発させた後,sugar probe mix (mannitol, lactulose, sucrose, sucralose)を経口投与し、Pre値採取時と同様の方法で採尿した。採尿後、消化管を採取し、食道から直腸全域について病理組織学的解析を実施した。採取した尿は、LC/MSMSを用いて各sugar probeの尿中排泄量を測定し、各sugar probe (lactulose, sucrose, sucralose)の対mannitol比を算出し、Pre値とtopotecan投与後で尿中各sugar probeの変動を解析した。
【結果】topotecan投与により、動物の臨床症状に明らかな変化は認められなかった。病理組織学的には用量線形性に小腸を主体とした腸陰窩の変性・壊死が認められた。尿中lactulose/mannitol比が、Pre値に比してtopotecan 0.5 mg/kg/day以上で増加していた。尿中sucrose/mannitol比が、Pre値に比して1.0 mg/kg/day投与群で増加していた。尿中sucralose/mannitolについては、明らかな変動は認められなかった。
【結論】ラットにおいても、Topotecanに見られるような抗がん剤誘発性の消化管障害のバイオマーカーとして、尿中lactulose及びsucrose/mannitol比が有用である可能性が示唆された。