【背景および目的】ペプチド結合性を指標とした皮膚感作性代替試験法であるDirect peptide reactivity assay(DPRA)法は、難水溶性物質の評価が困難である点、およびペプチドと被験物質の共溶出が多い点など、いくつかの適用限界がある。これらの課題を解決するため、我々は両親媒性の樹脂に固定化したペプチド(システインおよびリジン)を用い、難水溶性の皮膚感作性物質が測定可能な新たな皮膚感作性試験方法として、Chromophore-Solid Peptide Reactivity Assay(C-SPRA)を開発した。今回、難水溶性の皮膚感作性物質に対する適用性を検証するための検討を行った。
【方法】ペプチドは、システインまたはリジンを含む配列を設計し、それぞれ両親媒性樹脂であるNH2PEGレジンに固定化した状態のシステインまたはリジン固定化樹脂を作製した。被験物質はDimethylformamide(DMF)で100 mMに調製した。被験物質溶液は、システインまたはリジンペプチド固定化樹脂と混合し、24時間、25℃で反応させた。ペプチドとの反応性は、チオール基またはアミノ基の検出試薬として、それぞれ5,5’-Dithiobis(2-nitrobenzoic acid) またはPicric acidを用いて、吸光度の減少率から皮膚感作性を評価した。
【結果および考察】今回選択した被験物質において、C-SPRAにおける感度は70%以上であることが確認された。一方、同じ被験物質でのDPRAにおける感度は40%程度であり、約2倍高い感度であった。今回選定した被験物質の多くは難水溶性物質(LogKoW 3.5以上を選定)であり、C-SPRAは難水溶性物質に対する感度予測精度において、DPRAよりも高いことが示唆された。さらに、難水溶性物質のみならず水溶性物質においてもDPRAと同等の感度を有している可能性が示された。