日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-67S
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ポスターセッション
ヒト気道および肺組織におけるTRPイオンチャネルの発現個体差
*金澤 希大橋 和幸尾前 悠斤大河原 晋森 葉子礒部 隆史越智 定幸埴岡 伸光神野 透人香川(田中) 聡子
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抄録

【目的】室内環境中の化学物質はシックハウス症候群や喘息等の主要な原因、あるいは増悪因子となることが指摘されているが、そのメカニズムについては不明な点が多く残されている。本研究では、多様な生理機能を有し、多くの生体反応や病態に関わることが指摘されている侵害刺激受容体Transient Receptor Potential (TRP) Channelsについて、ヒト気道および肺組織における発現量の個体差について評価した。

【方法】正常ヒト気道組織由来Total RNAおよび正常ヒト肺組織由来Total RNA(それぞれ10 Donors)をBioChain社より購入した。MultiScribe Reverse Transcriptase (Applied Biosystems) を用いてTotal RNAからcDNAを合成し、TRPイオンチャネル遺伝子(TRPA, TRPV, TRPC, TRPM)について、その発現量をTaqMan MGB Probeを用いたReal-time PCRにより定量した。なお、リアルタイムPCRによる定量値は内在性コントロール遺伝子GAPDHおよびβ-アクチンを用いて標準化した。

【結果および考察】入手したTotal RNAの提供者の情報として、気道組織については21歳から 44 歳の男性(平均年齢:36.9±11.2歳)、肺組織については20歳から 72 歳の男性(平均年齢:40.8±19.1歳)であった。Real-time PCRによる定量解析により、気道過敏性の亢進や喘息の増悪等に関与するTRPA1の正常ヒト気道におけるmRNA発現レベルには100倍以上の個体差が認められることが明らかになった。我々はこれまでに、気道刺激性のin vitro評価系としてヒトTRPA1を安定的に発現する細胞株を樹立し、細胞内へのカルシウムの流入を指標としてその活性化を評価した結果、様々な室内環境化学物質がTRPA1の活性化を引き起こすことを明らかにしてきた。シックハウス症候群の特徴の一つとして、症状の有無やその程度には個人差が大きいことが指摘されているが、本研究結果より、化学物質に対する感受性の個体差を説明する要因の一つとして、気道組織におけるTRPA1が重要な役割を担っている可能性が考えられる。

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© 2019 日本毒性学会
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