【背景と目的】我が国では、化学物質の安全性評価の一環として28日間反復投与毒性試験が実施されている。通常、反復投与毒性試験では本試験に先立って投与量設定のため予備試験が実施される。すなわち一つの化学物質に対して二回の反復投与毒性試験を行っている。よって予備試験から本試験と同等の反復投与毒性が評価可能であれば、使用動物数はもとより、試験実施期間やコストの削減が期待できる。本研究の目的は、14日間反復投与毒性試験(14日試験)から28日間反復投与毒性試験(28日試験)への外挿性を評価することである。
【方法】Japan Existing Chemical Database (JECDB)収載で予備試験として14日試験が実施された28日試験のNOEL(14日試験) / NOEL(28日試験)比を算出した。さらにOpen TG-GATEs収載の14日及び28日試験結果を、一般的な毒性評価基準で求めたNOELだけでなく、化学物質の毒性評価代替値として開発されたベンチマークドーズ法により求めたBMDL1SDの二つの評価項目を用い評価した。したがって、NOEL(14日試験) / NOEL(28日試験)比と、BMDL(14日試験) / BMDL(28日試験)比を算出した。また、化学構造との関係を評価するためCramer毒性分類を行い、毒性クラスごとの評価を行った。
【結果】JECDBより132物質、Open TG-GATEsより134物質が本研究の対象となった。いずれのデータセット及び、NOEL比とBMDL比は、ほぼ同様の傾向を示し、各々の比の幾何平均(GM) = 1~2付近、95 %tile = 3~10付近であった。Cramer分類を行うとClass Ⅲで95%tile = 3~15、Class Ⅰで95%tile = 3~4.5となった。14日試験と28日試験でNOEL(もしくはBMDL)が大きく異なる物質の多くがClass Ⅲに分類された。Class Ⅱは、該当物質数が少数であったため評価対象外とした。
【結論】本研究の結果、14日試験から28日試験への外挿の可能性が示された。さらにCramer分類を用いて化学物質を群分けすることで、外挿の精度の高められることが示された。