日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-88E
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ポスターセッション
ヒト神経芽細胞腫におけるネオニコチノイド系農薬のシグナル毒性的影響評価と作用機序の解析
*平野 哲史皆川 沙月古澤 之裕柚木 達也池中 良徳横山 俊史星 信彦田渕 圭章
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抄録

【背景・目的】1990年代以降に農薬登録されたネオニコチノイドは昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRs)に対するアゴニスト作用を示す新規農薬であるが、動物実験により哺乳類nAChRsを介して不測の影響を及ぼす例が報告されている。また、国内外における本農薬使用量の増加に伴い、ヒト尿からの検出率および検出量が急増している一方で、ヒトnAChRsに対する作用については十分に検証されていない。本研究では、ネオニコチノイド系農薬の1種クロチアニジン(CTD)がヒト神経芽細胞腫に及ぼすシグナル毒性的影響および作用機序を解明し、ヒト神経系に及ぼす未知のリスクを明らかにすることを目的とした。

【方法】ヒト神経芽細胞腫(SH-SY5Y)に1–100 µMのCTDを曝露し、細胞数の変化を計測するとともに、細胞内シグナル状態の変化から機能的影響を評価し、各種nAChRsアンタゴニストの作用を検討した。加えて、マイクロアレイを用いてCTD曝露による遺伝子発現プロファイルの変化を解析した。

【結果・考察】CTD曝露群においては、培養24時間後以降に濃度依存的な細胞数の増加がみられ、その作用は広域アンタゴニストである mecamylamineおよびα3β4特異的アンタゴニストであるSR16584により消失した。また、CTD曝露直後においては一過性の細胞内カルシウム濃度の上昇、ならびにERKリン酸化レベルの上昇がみられた。Gene Ontology解析およびパスウェイ解析の結果、検出された発現低下遺伝子群は「カルシウムイオン流入」や「糸状仮足形成」等の細胞機能に関与しており、「軸索誘導」や「細胞骨格」に関するパスウェイが変動していることが示唆された。以上の結果から、ヒト神経芽細胞腫においてネオニコチノイド系農薬が機能的影響を及ぼすリスクが初めて明らかとなり、そのメカニズムとしてヒトnAChRs α3β4を介した細胞内カルシウムシグナルのかく乱が関連することが示唆された。

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