化学物質の安全性評価において動物実験代替法の開発が求められている。反復投与毒性試験は、化学物質の毒性学的特徴を評価する重要な試験であるが、評価項目の多さ、毒性発現機序の複雑さなどの理由により、ほとんど開発が進んでいない。安全性評価においては毒性発現機序に基づいた考察が重要であることから、代替法の開発においても機序情報を考慮する必要がある。私達のグループでは、製品評価技術基盤機構により公開されている有害性評価支援システム統合プラットフォーム(HESS)に搭載されているラット反復投与毒性試験データを学習用データセットとして利用して、各種インビトロ試験ならびにカテゴリーアプローチやリードアクロス手法等のインシリコ手法を活用した、反復投与毒性、特に肝毒性の評価・予測モデルの開発に取り組んでいる。本シンポジウムでは、平成29年度から実施している経済産業省受託事業「毒性関連ビッグデータを用いた人工知能による次世代型安全性予測手法の開発(AI-SHIPS)」の取り組みの一端を紹介する。本プロジェクトでは、インビボ反復投与毒性試験結果をHESSより入手可能な化学物質を被験物質として、毒性発現機序と関連する多数のインビトロ試験を実施し、その結果を基にインビボ毒性を予測することを目指している。より具体的には、化学物質の作用点として、解毒や代謝活性化に関わる薬物代謝酵素のシトクロムP450やグルクロン酸転移酵素、肝毒性や肝機能ホメオスタシスに関わる核内受容体、ならびに胆汁排泄関連トランスポーターとの反応性評価、また、細胞レベルでの化学物質応答性の指標として、初代培養ラット肝細胞のハイコンテントイメージング解析などを実施してデータの蓄積を進めている。本発表では、開発戦略と開発状況、今後の展望を紹介したい。