日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S13-2
会議情報

シンポジウム 13
医薬品の毒作用発現におけるエピゲノミクス研究の現状と展望
*瀧 憲二
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 医薬品を含む化学物質による毒性発現において,トランスクリプトミクス作用と合わせてエピジェネティクス作用を考慮する必要が提起されてきている。エピジェネティクスに関与する反応としては,核のクロマチンモデリングに影響を及ぼすDNAのメチル化,脱メチル化,ヒストンのアセチル化,脱メチル化,ユビキチン化,リン酸化などの作用とともに,ノンコーディングRNAによる遺伝子発現調節機構も挙げられる。

 エピゲノム毒性としてよく知られているのが神経毒性と生殖発生毒性であるが,本報告では,抗てんかん薬バルプロ酸のクロマチン構造に影響する毒作用,制癌剤5-アザシチジンの胎盤に対する影響,その他の例を提示し,miRNA発現に関わる分子生物学的領域での網羅的解析からの知見を紹介する。

 更なる知見として,miRNAの発現制御およびDNAメチル化の異常パターンは,最終的に薬物曝露,疾患の重症度,あるいは将来の疾患または障害を発症するリスクの“初期指標”として,診断バイオマーカーの役割を果たす可能性が示唆されている。これらの報告と共にエピゲノム創薬の展望と派生しうる毒作用について言及する。

著者関連情報
© 2019 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top