日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S2-2
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シンポジウム 2
遺伝毒性作用機序を踏まえたリスク評価
*宇野 芳文
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抄録

遺伝毒性に係わるリスク評価に一般的に使われるのは,複数の遺伝毒性試験法の組み合わせによる証拠の重み付け(weight of evidence: WoE)のアプローチである.WoEは医薬開発品等の発がん性を開発初期段階で予測するスクリーニングとして主に用いられ,また,化学発がんが生じたときに遺伝毒性の関与があるかを吟味するためにも使われる.WoEは規制科学として十分な役割を果たしているが,遺伝毒性の作用機序(mechanism of action: MoA)を明らかにすれば更に精緻なリスク評価が可能と考える.例えば,1)in vitro小核試験の陽性結果フォローにWoEでは2種の組織を用いるin vivo遺伝毒性試験が行われるが,in vitro小核試験にDNAアダクトーム解析を組み込めば陽性結果のMoAに化学物質によるDNAの直接損傷作用が含まれるかをin vitroだけで評価でき,遺伝毒性作用に閾値が想定できるかの議論を可能にする;2)予備的な解析結果から,in vivoでの化学物質の曝露量がin vitroでの曝露量と同等以上であることが化学物質により誘発されるin vivo染色体損傷を検出するために重要な因子であるかもしれないことが示唆された;3)化学物質のもつ化学的・生物学的な特性を考慮したケースバイケースの解析はリスク評価に有用であり,例えばpoly(ADP-ribose)polymerase-1阻害薬がin vivo小核を誘発する原因はその薬理学的特性(DNA修復阻害)によるもので,このMoAから小核誘発に対して閾値を有することが期待される.本講演ではこれら事例を紹介し,遺伝毒性作用機序を踏まえたリスク評価の重要性を議論したい.

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© 2019 日本毒性学会
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