日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S2-3
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シンポジウム 2
γ-H2AXを用いた遺伝毒性リスク評価のための機序解明研究
*三島 雅之
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抄録

現在の先進国における生活で、まとまった量の遺伝毒性物質に暴露する機会があるとすれば、最も可能性が高いのはがん治療かもしれない。今日、日本、米国、欧州ではいずれも、40-55%の人がその生涯のどこかでがんと診断されている。従来、抗がん剤であればその遺伝毒性はリスクベネフィットの観点から許容されると認識されてきたため、抗がん剤の遺伝毒性の強弱や活性は重視されなかった。しかしながら、近年のがん治療成績の大幅な向上により、がん患者の生存期間が長期化するにしたがって、抗がん剤による二次発がんが問題になっており、遺伝毒性の強弱や機序について理解しておくことは、QOLの予測や薬剤選択の面でも重要な要素になりつつある。γ-H2AXは、DNA傷害のサロゲートマーカーとして様々な細胞で簡便に測定できるバイオマーカーである。γ-H2AXはガンマ線によるDNA二重鎖切断に伴うヒストンタンパク質H2AXのリン酸化現象として発見されたことから、一般にDNA二重鎖切断のマーカーとして認識されている。一方で、トポイソメラーゼ阻害剤や紫外線など、二重鎖切断以外のDNA傷害を誘導する遺伝毒性物質もγ-H2AXを増加させる。さらに、アポトーシスに伴ってγ-H2AXが誘導されるし、細胞分裂の過程で生理的に増加するとの報告もある。ここでは、γ-H2AXの性質と、これを遺伝毒性機序研究に応用する背景、測定方法、これをin vitro及びin vivoにどう使って実際に何ができているのかについて、最新の知見に基づいて論じる。

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