毒性学における顕微質量イメージングの応用は極めて大きな注目を集めており、今後も前臨床段階における評価法として発展するものと考えている。この根拠は極めて明快であり、薬物分布(未変化体および代謝物)と病理学的な描像を対比して議論が可能であるからである。毒性学の質量イメージングデータは、通常公表されることが非常に少ない。したがって、本講演では海外の事例も含め話題提供をしたいと考えている。近年では、質量イメージングで検出する対象は、有機化合物由来の薬剤以外にも金属含有薬剤まで対象が広がっている。一般的に見られる報告は、シスプラチンなどのプラチナ製剤が引き起こす腎障害に関するものが多い。しかし、プラチナ以外の金属が副作用を発症することもあり、このような観点からすると、様々な金属分布が可視化できる誘導結合プラズマ質量分析イメージングもまた、非常に重要な新技術の一つとなると考え、話題に組み込む予定である。他にも、我々が行なっている新しい毒性評価法(酵素学的な視点)についても紹介し、ディスカッションを行いたい。