日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S23-3
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シンポジウム 23
In vivo発がん物質短・中期検出法の開発
*鰐渕 英機魏 民
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抄録

 生活環境を取り巻く化学物質の発がん性を迅速にかつ高精度に検証できるシステムの確立は、有害性評価の面から社会的にも経済的にも非常に重要である。特に、ヒトに対する発がん影響を反映できる個体レベルの動物モデルによる評価法は現在においても必要不可欠であり、少数の試験動物数で正確に発がん性評価ができる短・中期でのバイオアッセイ系の開発が望まれている。こうした背景のもと、発がん物質を高精度に検出できる短・中期 in vivoスクリーニング系の開発が取り組まれている。歴史的には、肝中期発がん性試験法(伊東法)や遺伝子改変マウス試験法など行われてきている。  最近では、肝発がん物質に関しては遺伝子発現変化を調べることで遺伝毒性および非遺伝毒性肝発がん物質を短期、中期で検出する遺伝子発現ベース発がん検索法の知見が蓄積されつつある。遺伝毒性肝発がん物質は、被検物質を単回投与後1日のラット肝臓における遺伝子マーカーセットの発現データを数理学的予測モデルに入力することで、高精度に遺伝毒性肝発がん物質とその他の物質を判別できる。また、非遺伝毒性肝発がん物質は、28日間までの反復投与後の肝臓における遺伝子発現の変化を調べることで検出でき、細胞障害型、酵素誘導型、またはPPARαアゴニスト型に分類し、肝発がんメカニズムを予測できる。一方、γ-H2AXの免疫組織化学染色によって化学物質のラット膀胱に対する発がん性を高い精度で予測できることが示され、OECDテストガイドライン化を目指している。これらの評価法は従来の発がん性評価系と比較して、化学物質の発がん性を短期間かつ高精度に評価できる新規評価系としての活用が期待されている。

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