中枢毒性は様々な所見の総称であり、非げっ歯類で認められる嘔吐などの比較的軽微なものから、脳病理組織学的変化や痙攣から死亡に至る中枢毒性までその重篤性は様々である。中でも中枢移行性の高い医薬品開発では、中枢毒性は少なからず発現し、多くの場合その中枢毒性の所見の種類や重篤性、回復性をもとにスクリーニング評価の対象毒性として評価が進められている。特に脳病理組織学的変化は、動物種差やヒトへの外挿性に関する情報が乏しいがゆえに、広い安全域が得られない限り、化合物をドロップアウトさせるケースが多い。
しかしながら、中枢毒性は動物種間で異なる反応が見られることがあり、当該動物種特有の作用機序の存在が示唆される。毒性の種特有の作用機序を解明することは簡単ではないが、我々はそれに挑戦し続け、化合物の真の価値を判断する役割があると考える。
今回、当社の初期安全性評価段階で認められた脳病理組織学的変化について種差とその作用機序に関する取り組み事例を紹介する。中枢毒性の初期評価における適切な動物種選択、種差検討の取り組みの必要性について問題提議したい。