日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: S5-4
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シンポジウム 5
抗体医薬品開発における毒性種差の事例
*南谷 賢一郎
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抄録

抗体医薬品は、その標的分子への高い特異性を有する特徴からオフターゲットの毒性が少なく、臨床での副作用を予測しやすいと考えられるが、実際は多くの抗体医薬品の臨床試験において副作用が問題となっており、非臨床試験成績からのヒトへの外挿性は決して高いとは言えない。その理由としては、抗体の非臨床安全性試験に汎用されているカニクイザルとヒトには種差が存在し、臨床での副作用リスクを十分に把握できていないことが挙げられる。標的分子の発現部位、発現量、薬理/生理活性は必ずしもヒトとサルで同質・同等ではなく、抗体の標的分子に対する活性や結合性の強度にも種差がある。また、健常時には薬理作用を示さない抗体も多く存在する。このように従来の評価法を用いた安全性評価には限界があり、ヒト由来試料を用いた評価やTarget biologyの深掘りに基づく新たな評価系の利用が予測性の向上につながると考えられる。

本発表では、カニクイザルの反復投与毒性試験では毒性兆候がなかったにもかかわらず臨床試験において重篤な副作用(中枢神経毒性、肝毒性)が問題となった2種の抗体医薬品の事例を紹介する。従来の毒性評価法の課題や臨床副作用の予測性向上に向けた取り組みについて議論したい。

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