臨床第I相及び第II相試験では臨床検査は被験薬の安全性評価に主に用いられる。Proof of Concept試験として薬効評価に用いられることもある。本発表では安全性評価について述べる。臨床検査の役割の一つは、被験者の安全をモニターすることである。例えば、腎、肝障害など自覚症状がすぐに現われない有害事象を早期に予知し、重篤な有害事象を未然に防ぐ。もう一つは、被験者の安全性プロファイルを同定することである。例えば、第I相試験の用量漸増、単回から反復投与、第I相から第II相試験移行時などに行う。次に臨床検査の実施、評価方法を述べる。基本的に血液学的検査、血液生化学検査、尿検査が行われ、被験薬の特徴や非臨床毒性データによって内分泌学的検査、血液凝固検査、免疫原性検査などが行われる。First in Human、First in Japanese試験では、血中薬物濃度の予測されるピーク、トラフ、定常状態などに合わせて綿密に行われる。検査値に影響する被験者の固有変動や生理変動を最小化するため、均一な背景の被験者が厳しい基準に従って選ばれ、とくに第I相試験では入院下で検査が行われる。例えば、固有変動にはビリルビンのグルクロン酸抱合を担うUGT1A1の遺伝子多型による総ビリルビンの上昇があり、生理変動には食事過多によるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の上昇、運動によるクレアチンキナーゼ(CK)、乳酸脱水素酵素(LDH)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇がある。発表者らは入院下のプラセボ投与で甲状腺ホルモン(FT4、FT3)の減少、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の上昇を経験した。評価では施設基準値を指標に、ベースラインからの変化、臨床的に意味があるかなどが考慮される。第I相及び第II相試験の臨床検査の役割は、被験者の安全確保と安全性プロファイルの同定であると考える。