新薬は臨床の現場に、これまで必ずしも満たされていたとは言えなかったニーズを満たすものとして登場する。その際に、薬剤の作用機序から想定されるメリットとデメリットの情報、そしてこれまでの臨床試験における効果と安全性の情報も医師側に伝えられる。これらを基に、各患者のリスクとベネフィットを勘案して処方の決断がなされ、薬効と想定される副作用をモニターするための一連の臨床検査が組まれる。血液学的検査、血液生化学検査、尿一般検査、尿生化学検査が基本となり、さらに個々の薬剤の特性により項目が追加される。疾患に関する情報や臨床経験、新薬に関するこれまでの知見へのアクセスなどから、専門医は診療中の患者より新薬使用により適した症例を選ぶことが可能である。そのため、新薬の使用は専門医から始まり、臨床現場での新薬の使用経験が蓄積し、非専門医に広がることが多い。新薬が上記のような過程で臨床に広がる原因として、疾患の多様性や患者背景の多様性があり、非臨床試験や臨床試験で全てをカバーすることが困難であることがあげられる。疾患の多様性や患者背景の多様性のため、臨床現場で使用開始後に認識された安全性に関する問題を、代謝性疾患の領域を例に取り上げて紹介する。また免疫チェックポイント阻害薬使用で報告されている、甲状腺炎や1型糖尿病などの自己免疫疾患を例に、専門領域を超えた連携による副作用のモニター体制も合わせて紹介する。