主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
概要
In vitroで心筋の副作用を予測するため、ヒトiPS細胞由来心筋細胞(hiPSC-CM)を用いた電気生理学的な手法やカルシウムイメージングが広く行われている。しかしながら、これらの評価系で、一般的に細胞が硬い基材上で培養されているため、心筋の収縮が抑制されている。ゼラチンハイドロゲル繊維不織布(GHFN)は、繊維同士が結合したネットワーク構造を有し、柔軟性と変形回復性の両方を有しているため、大きく安定した心筋収縮が得られると期待できる。我々は、GHFN上で培養した心筋細胞のカルシウムイメージングと動きを観察し、これらの同時測定に成功した。この評価系を用い、イソプロテレノール、E-4031、ベラパミルが心筋に与える効果を検討した。
実験
フィブロネクチンコートを施したGHFNに、ヒトiPS細胞由来心筋細胞iCell cardiomyocytes2 (FUJIFILM Cellular Dynamics Inc.)を足場に対し6000 cells/ mm2 で播種した。培養7、15日目に、培養液中に薬物を加え、カルシウムイオン濃度および収縮挙動の変化を、共焦点イメージングシステムCQ1(横河電機社)で観察した。GHFN上での細胞の配向と、内部構造を観察するため、蛍光免疫染色を実施した。
結果
GHFNに心筋細胞を播種すると、培養7日以降でGHFN全体が同期拍動した。心筋細胞がゼラチン繊維上に接着し、ゼラチン繊維に沿ってアクチン繊維が伸展していた。これらのアクチン繊維は、ゼラチン繊維の交点を介して連結し、ネットワーク構造を形成した。15日間培養することで、心筋の拍動がより大きくなり、ゼラチン繊維に沿って配向したサルコメア構造が観察された。タイムラプス動画からカルシウムトランジェントと動きを同時に測定することで、1つの像からカルシウムレベルと心筋の動きを評価することが可能であった。このシステムを使用することで、イソプロテレノール添加により、拍動数の増加とともに、収縮力と収縮弛緩速度が増加することが確認できた。発表では、GHFN上で培養したhiPSC-CMの他の薬剤応答性についても報告する。