主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
[目的] 薬剤性肝障害(Drug-induced liver injury, DILI)は医薬品開発及び販売中止の主要要因の一つであり、医薬品開発の初期段階にDILIリスクを予測することは重要である。我々はこれまでに、cDNA-uPA/SCIDマウスをホストとして作製したヒト肝細胞キメラマウス(PXBマウス®)から分離した新鮮ヒト肝細胞(PXB-cells®)が、in vitroにおいてプレートへの高い接着性を示すとともに、高いアルブミン産生能、多くのヒト薬物代謝酵素やトランスポーター発現および機能を長期間維持していることを確認している。PXB-cellsを用いたin vitroモデルは、DILIリスク予測への有用性が期待でき、既に昨年の本学会においてミトコンドリア毒性およびリン脂質蓄積症の検出に有用であることを報告した。今回我々は、薬剤性脂肪症リスク予測への有用性を検討した。
[方法] PXB-cellsをプレートに播種し、播種7日後から0.1 mM脂肪酸(オレイン酸・パルミチン酸)を加えた培地に、ヒトで薬剤性脂肪症が報告されているバルプロ酸(VPA, 0.1-10μM)を添加した曝露試験を行った。VPAはミトコンドリアでのβ酸化を阻害することにより、脂肪酸の代謝が抑制され細胞内に蓄積することが知られている。曝露3日目に脂肪蓄積量はOil Red O染色により定量し、細胞毒性はアルブミン分泌量を指標として評価を行った。
[結果・考察] 曝露開始3日目に、VPA 5 mM以上の群で非曝露群に比べ濃度依存的に脂肪蓄積量の増加が確認され、PXB-cellsの薬剤性脂肪症リスク予測への有用性が示唆された。現在、他の薬剤についても検討中である。