日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P037
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発表要旨
日本の市区町村別合計出生率と外国人
山内 昌和
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抄録
 本報告の目的は、1990年以降の日本における市区町村別TFRに対する外国人の影響を整理し、地域的な特徴を把握することである。 日本における外国人のTFRを市区町村別に計測することは資料上の制約から困難であるため、本報告では日本人と外国人を含む総人口のTFRと、日本人のTFRをそれぞれ市区町村別に算出し、両者の差を外国人の影響として評価することにした。利用したデータは、出生数については人口動態統計、年齢別人口については国勢調査である。国勢調査の結果については、年齢および国籍不詳を按分した値とした。TFRは5歳階級別のデータから算出した。集計対象としたのは2010年10月1日時点の1,750市区町村である(政令市の区は除き、東京23区は含む)。ただし、旧上九一色村を含む甲府市と富士河口湖町のTFRは両市町を合算して算出した値とした。分析対象の時期は、1990年から5年おきに2010年までの5時点である。 主な結果は以下の4点である。①総人口の出生数に占める外国人の出生数の割合は、約半数の市区町村で0%であったが、一部の市区町村で5%を超えていた。1990年以降、外国人の出生数の割合が上昇する市区町村は増えていた。②総人口のTFRと日本人のTFRを比較したところ、両者の差は最近ほど拡大する傾向にあり、大多数の市区町村で日本人のTFRの方が高かった。③日本人のTFRの方が総人口のTFRよりも高い市区町村のうち、とくに両者の差が大きいのは外国人女性を研修生等の形で受け入れていると考えられる地域であり、外国人の出生数の割合はほぼ0%となっていた。④総人口のTFRの方が日本人のTFRよりも高い市区町村はいずれも外国人の出生数の割合が高いが、その数は限られており、外国人の出生数の割合が高い市区町村であっても日本人のTFR方が日本人のTFRよりも高いケースは少なくなかった。 なお、本稿での外国人あるいは日本人の出生とは、母親の国籍を基準としたものである。したがって、外国人の出生とは外国人女性の出生のことである。
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