日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-2
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口演
ドコサヘキサエン酸(DHA)摂取によるロテノン誘発性パーキンソン病様症状の軽減効果におけるDHA代謝物の作用解析
*大黒 亜美石原 康宏今岡 進山﨑 岳
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抄録

ドコサヘキサエン酸(DHA)は脳機能維持に重要な必須不飽和脂肪酸であり、その摂取は老化や脳疾患に伴う記憶や運動能力の低下に対する予防や改善に有効であることが報告されているが、その作用機序は十分には明らかにされていない。DHAは生体内で様々な代謝物へと変換される。そこで本研究では、ロテノン投与により誘導されたパーキンソン病モデルラットを用いてDHA摂取による症状の軽減効果におけるDHA代謝物の関与を検討した。SDラットにDHAを摂取させることにより、ロテノンにより誘導される運動機能の低下及び、線条体におけるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の発現低下が抑制されることを確認した。またDHA摂取は抗酸化因子を誘導することで、ロテノンにより増加した酸化ストレスを軽減することが示された。これらラットの脳内におけるDHA及びDHA代謝物をLC-MSにより解析した結果、DHAからチトクロームP450により産生されるDHAエポキシ体、及びさらにこれらが可溶性エポキシド加水分解酵素(sEH)により代謝されたDHAジオール体が脳に存在することを明らかにした。DHA摂取により、脳内の遊離型DHA、及びDHAエポキシ体量は変化しなかったが、DHAジオール体である19,20-DHDPが増加していた。そこで、DHAとsEHの阻害剤を共にラットに摂取させたところ、DHA摂取によるパーキンソン病症状の軽減効果や抗酸化因子の誘導は、sEH阻害剤によって抑制されることが示された。これらの結果はDHAの摂取効果においてDHAジオール体が重要な役割を担っている可能性を示唆している。そこで神経様細胞であるPC12細胞に19,20-DHDPを添加したところ、抗酸化酵素の発現が誘導されることが示された。本研究により、DHA摂取によるパーキンソン病症状の軽減効果にはDHA代謝物の作用が関与していることが示された。

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