日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-31
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ポスターセッション
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の2年間ラット気管内反復投与試験における投与器具の違いによる毒性の比較:1年経過時点での報告
*前野 愛北條 幹坂本 義光湯澤 勝廣長谷川 悠子長澤 明道生嶋 清美平松 恭子海鉾 藤文山本 行男安藤 弘田中 和良鈴木 仁猪又 明子守安 貴子高橋 祐次横田 理小林 憲弘広瀬 明彦中江 大
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抄録

【背景】ナノ物質の呼吸器慢性毒性知見は少なく、2年間の吸入曝露試験を代替し得る効率的な試験法の開発が求められている。本研究は、MWCNTの2年間の間欠気管内投与試験の中間屠殺動物において、投与器具の違いが及ぼす影響について解析した。【方法】Fischer 344系雄性ラット(9週齢)に、分散媒体のみを経口ゾンデにより(C群)、また、0.5 mg/kg体重の用量でMWNT-7の分散液を経口ゾンデ(F群)あるいはスプレー式ゾンデ(S群)により、4週間に1回、気管内に投与した。動物は、実験開始から半年後(7回投与後)および1年後(13回投与後)に各群4~5匹ずつ解剖し、肺の組織学的検索および肺胞洗浄液(BALF)の分析を行った。

【結果】肉眼的に、MWCNTの沈着による黒色は、S群で肺全体にみられたのに対し、F群で肺葉の尾側に偏っていた。組織学的には、いずれの群においても1年後までに腫瘍性病変を認めず、F群で気管支肺胞上皮過形成1例および胸膜中皮過形成1例を、S群で胸膜中皮過形成2例を、それぞれ認めた。また、S・F両群においては、MWCNTを貪食した肺胞マクロファージの集簇、肉芽腫性炎症およびⅡ型肺胞上皮細胞の反応性過形成をびまん性に認めた。BALF内の白血球数と総タンパク質量は、S・F両群間に差異がなかった。

【考察】経口ゾンデによる投与ではラットの頭部を上に固定した状態で線状に分散液が投与されるため、MWCNTが尾側に分布しやすくなると考えられる。しかし、総体的に評価すると、投与器具の差異は、本試験に顕著な影響を及ぼさないことが判明した。(厚労科研費H30-化学-指定004による)

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