日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: W7-2
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ワークショップ7
抗がん剤誘発疲労に対する栄養療法の有用性に関する基礎的検討
*吉澤 一巳黒野 瑠佳佐藤 遥石嶋 恵理佳山根 碧衣Nurfarhana FERDAOS鈴木 秀隆
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抄録

がん関連疲労は、「がんまたはがん治療に関連したつらさを伴う持続的、主観的な疲労感または消耗感」と定義され、がん患者において発生頻度の高い症状である。このがん関連疲労は、腫瘍そのものに起因するものとがん化学療法に代表されるがん治療による起因するものが多次元的に影響し合って生じると考えられている。多くのがん患者が経験する疲労・倦怠感は、対処困難な症状の一つとされており、緩和方法の確立が望まれている。当研究室では、担がんモデルマウスを用いた腫瘍そのものに起因する疲労とシスプラチン(CDDP)を投与することで生じる疲労の両面で研究を進めている。今回は、CDDP誘発疲労に関する知見を紹介する。マウスにCDDP(10 mg/kg)を腹腔内投与したところ、有意な摂餌量の低下とそれに伴う体重減少を示した。さらに、トレッドミルを用いた走行持久力の解析によりCDDP投与に伴う走行持久率の低下、すなわち易疲労性が認められた。また、CDDP誘発疲労に関連する因子を探索したところ、肝グリコーゲン量の低下が易疲労性の要因の一つであることがわかった。そこで次に、栄養療法の有用性を検証したところ、高エネルギー量の脂質の投与ではなく、糖質を主体とする栄養剤、スクロースならびにグルコースの投与により肝グリコーゲン量と易疲労性の改善が認められた。以上の結果から、CDDPによる低栄養は、肝グリコーゲンを消費して恒常性を保ち、その代償として疲労を呈するものと考えられた。そのため、肝グリコーゲン合成への寄与が高い糖質を摂取することが、疲労の改善に繋がったものと推察される。

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