日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: EL1
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教育講演
生命科学としての医薬品安全性評価
*堀井 郁夫
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抄録

医薬品安全性評価の基本的命題は「医薬品の安全性を担保することでなく、誘発されうる毒作用を明確に提示し、ヒトでのリスク評価・管理する」ことにある。その遂行上、安全性評価(薬効および毒作用)が多様性学問領域に裏打ちされた生命科学的同一プラットフォームにある事を理解する必要がある。医薬品開発研究において、薬効および毒性の明示とその作用機序を明らかにするとともにヒトへの外挿性検討やそのリスク評価(程度・容認性・軽減性・回避性など)・リスク管理(患者への的確な医薬適用提示など)に的確な情報を提示する事が要求される。

実際的には、病気・病因に対する薬効薬理学的知見の把握・理解から始まり、誘発される毒性の特定から安全性評価が進められる。毒作用毒作用発現機序機序解明の原点は、創薬のターゲットから捉えたMOA(mode of action)と毒作用発現状態を提示したAOP(adverse outcome pathway) の両面思考を合わせて考究していくことにある。毒作用発現機序を提示する事は、それに関わる指標(バイオマーカー)を設定する事に繋がり、ヒト適用時のリスク評価・管理の方向性の提示に重要な役割を果たす。また、創薬初期から承認申請に至る過程でのリード・開発候補化合物選定時におけるDecision-makingへの貢献度は高い。更に、開発の方向性の示唆・決定や開発途中での “Go” “No-Go” DecisionやClinical hold への対応に意義のある情報を提供する。

現実的に、医薬品安全性評価が承認申請上の観点から規制科学的な思考で展開されるのが常道とされていことは否めない。然しながら、生命科学の基盤に規制科学が立脚している事、新しい医薬医療の場には生命科学的思考が不可欠であることを忘れてはならない。

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