日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-107
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ヒト胎児脳由来神経前駆細胞を用いた神経分化に対するネオニコチノイド曝露の影響
*藤原 悠基宮崎 航鯉淵 典之
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抄録

【背景・目的】農薬として使用されているネオニコチノイドは昆虫のニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)に選択的に作用するが、ヒトnAchRにも影響を及ぼす可能性が指摘されている。nAchRは神経分化に重要であり、ニコチンを用いた研究においても神経前駆細胞から神経系細胞に分化する際のnAchRを介する影響が報告されている。そこで、本研究では胎児期におけるネオニコチノイド曝露による神経発達障害に注目し、ヒト胎児脳由来神経前駆細胞株を用いた神経系分化に対するネオニコチノイドの曝露影響を検証した。

【方法】ヒト胎児中脳由来神経前駆細胞株Rencell VM 細胞をbFGF及びEGF不含培養液にて培養し、神経系細胞へ分化誘導を行った。この分化系に分化誘導時からネオニコチノイド(アセタミプリド、イミダクロプリド、ジノテフラン)およびニコチンを曝露し、分化3日目にtotal RNAを抽出してRT-PCRを行い、神経系細胞マーカー(神経細胞:βⅢ-tubulin、アストロサイト:GFAP)の発現の変化を解析した。さらに免疫染色を行い、βⅢ-tubulin陽性細胞数および形態を観察した。

【結果】RT-PCRの結果、ネオニコチノイド曝露群において、βⅢ-tubulin、GFAPともに対照群に対してmRNA量の有意な差は認められなかった。また、ニコチン曝露群においても対照群と比較して有意な差は認められなかった。免疫染色においてもネオニコチノイド曝露群はコントロール群に対してβⅢ-tubulin陽性細胞数の有意な差は認められなかった。以上の結果から、分化開始から3日目の間に神経前駆細胞から神経系への分化にネオニコチノイドが影響を及ぼす可能性は低いことが示唆された。

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