主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
医薬品の生殖発生毒性試験法ガイドライン(ICH S5)が約20年ぶりに改訂され,2021年にガイドラインの国内通知化(Step5)に至った。ICH S5 (R2)からの主な変更点として,胚・胎児試験の実施時期,予備試験の活用,曝露量に基づく高用量設定,代替法の記載等に加え,リスク評価に関する項目が追加された。改訂ガイドラインでは,リスク評価の項目に「無毒性量(NOAEL)とヒト最大用量(MRHD)における曝露量比に基づく安全域が10倍未満の場合の安全性懸念は増大し,25倍を超える曝露量でのみ生じる影響における安全性懸念は小さい」という安全域の考え方が示されており,公表論文に基づいた生殖発生毒性評価の具体的な解釈が記載されている。本ICH S5ガイドラインの改訂を背景として,我々は生殖発生毒性試験成績の解釈について理解を深めるため,PMDAのホームページで公開されている2017~2021年度に承認された医薬品を調査し,審査報告書における生殖発生毒性試験結果とその解釈,及びMRHDにおける曝露量に対する胚・胎児の無毒性量における安全域を集約した。また,「医療用医薬品添付文書の記載要領」も約20年ぶりに改正され,妊婦に対する注意事項の記載では,胎盤通過性及び催奇形性のみならず,曝露量,妊娠中の曝露期間,臨床使用経験等を考慮し,指定された記載事項を提示することが要求されている。生殖能を有する者及び授乳婦に対する注意事項の記載においても同様に,非臨床試験及び臨床試験成績を基づいた必要な記載事項が定められている。これらを踏まえ,添付文書の記載内容についても併せて調査し集約した。
本発表では,これら集約結果を基に,生殖発生毒性を有する医薬品が承認に至った理由を考察するとともに,添付文書での対応,及び適応疾患やモダリティーの観点からも解析を行ったので紹介する。