日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-191
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オクラトキシンAのラット90日間反復投与例の腎臓発がん部位におけるDNAメチル化制御破綻に着目した網羅的遺伝子探索
*小澤 俊介岡野 拡髙嶋 和巳高橋 康徳尾城 椋太唐 倩鄒 昕羽吉田 敏則渋谷 淳
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抄録

【背景及び目的】カビ毒であるオクラトキシンA (OTA) は、ラットへの投与により腎臓髄質外層外帯 (OSOM) の尿細管上皮特異的に巨大核を形成して腎細胞腫瘍を誘発するが、その発がん機序は不明なままである。本研究では、OTAによる腎発がん機序の解明を目的として、DNAメチル化制御破綻に着目した網羅的な遺伝子探索を行った。

【方法】ラットにOTAまたは巨大核を誘発しない腎発がん物質である3-monochloropropanediolの腎発がん用量を90日間反復経口投与した。得られた腎臓のOSOMについてRNA-SeqとDNAメチル化アレイ解析を実施し、OTA特異的にメチル化と遺伝子発現が変動した遺伝子を抽出した。

【結果及び考察】網羅的解析の結果、OTA特異的に過メチル化し発現低下した27遺伝子及び低メチル化高発現の41遺伝子を選別し、その中でそれぞれ17及び25遺伝子でリアルタイムRT-PCRによる発現の検証ができた。前者の代表的な遺伝子オントロジーとしてmitochondrionが見出され、その中にTCA回路や酸化的リン酸化を正に制御するAcss1, Clpx, Slc25a23が含まれており、Warburg効果に関連した細胞代謝のリプログラミングが示唆された。その他、DNA二本鎖切断修復や染色体分離に機能するGen1も見出され、巨大核形成や染色体不安定性への関与が示唆された。一方、低メチル化高発現遺伝子のオントロジーとしてcell adhesionが見出され、その中に、細胞内ヒアルロン酸産生を介して中心体の異常や小核形成を増加させることが報告されているHas1が見出された。その他、細胞周期停止による細胞老化誘導に関与する癌抑制遺伝子のCdkn1a (P21Cip1/Waf1) 、PI3K/Akt/NF-κB経路等を活性化することで細胞増殖を亢進させることが報告されているCyr61, Rgs20, Anxa3が見出された。以上、OTAによる腎発がんの初期過程で、細胞周期異常を介した染色体不安定性や細胞代謝異常の誘導に関わる複数のDNAメチル化制御破綻遺伝子が得られた。

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