主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
芳香族アミンによる職業性膀胱癌は社会的な問題の一つであり、最近でもo-toluidine(OTD)等の芳香族アミンを取り扱う従事者から膀胱癌が発生しており、今後も類似の芳香族アミン類による職業膀胱癌発生の危険性が存在する。我々は福井県の化学工場で曝露を認めた芳香族アミンを用いて、その膀胱尿路上皮への影響とともに尿中代謝物に着目し影響の相関を検討した結果、尿中にOTD及びその代謝物が存在した芳香族アミンにおいて、膀胱上皮への増殖性影響を与えることを確認した。そこで、今回は尿中に存在したOTD代謝物である2-amino-m-cresol (2AMC)、4-amino-m-cresol (4AMC)およびo-acetotoluidine (AOTD)を用いて、膀胱上皮への影響を検討した。方法として、6週齡雄F344ラットに0.6%の2AMC、4AMCもしくはAOTDを混餌投与した。4週間後に屠殺・剖検し膀胱を採取、病理組織検討、免疫組織化学染色およびTUNEL染色を行った。その結果、AOTD投与群では膀胱に単純過形成病変が有意に増加し、Ki67陽性率の有意な上昇を認めた。一方、2AMCおよび4AMC投与群では対照群と比較し、いずれも差が見られなかった。TUNEL陽性率についてはいずれの群でも差が見られなかった。以上より、OTD関連芳香族アミンばく露による尿中代謝物であるAOTDが膀胱発がん性に関与する可能性を示した。