主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
【目的】エリスロポエチン(EPO)は、赤血球の産生に不可欠であるだけでなく、細胞保護を始め様々な機能を持つ。骨髄の造血幹細胞だけでなく種々の細胞でEPOレセプター(EPOR)が発現しており、EPORからJAK2 / STAT5、MAPK、およびPI3K / AKTの3つを介したシグナル経路が知られている。ヒト肝がん由来HepG2細胞は、EPO産生細胞であると共にEPORを保有しており、EPORを介したEPOの作用がEPO産生に影響する可能性があるが、詳細は明らかではない。そこで、HepG2細胞を用いて、EPO投与がどのようなシグナル経路でEPO産生に影響するか解析することを目的とした。
【方法】HepG2細胞に、リコンビナントヒトエリスロポエチン(rhEPO)、またはrhEPOとSTAT5の阻害剤であるSTAT5inhibitorを同時に処置し、37℃、5% CO2の通常酸素条件において、DMEM培地で24時間培養後、細胞を回収した。また、EPOR siRNAを導入したHepG2細胞にrhEPOを処置し、同条件で培養後、細胞を回収した。 EPO、EPORのmRNA発現量をreal-time RT-PCR法で測定した。
【結果と考察】EPO投与によりEPOのmRNA発現量が有意に増加し、EPO産生が増加していると考えられた。siEPOR処置により、EPO投与の効果は消失し、EPOはEPORを介してEPO産生に影響していることが示唆された。JAK2 / STAT5シグナル経路はnicotinamide phosphoribosyltransferaseを介してsirtuin1活性を増加させ、EPO産生の調節因子であるhypoxia-inducible factor(HIF)に抑制的に作用することが報告されている。STAT5inhibitor を同時処置すると、EPOのmRNA発現量が有意に増加した。これらの結果から、EPOはEPORを介してEPO産生を促進すると共に、JAK2 / STAT5経路によってEPO産生は抑制され、過剰な産生促進を防いでいると考えられた。HepG2細胞では自身が産生したEPOによるフィードバック調節があると考えられた。