主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
重篤な毒性の一つである痙攣を評価する試験系はこれまでin vivoが主流であったが、近年は培養神経細胞と微小電極アレイ(MEA)システムを用いたin vitro試験も多数検討されている。このin vitro試験は、痙攣を誘発する化合物が神経細胞の自然発火に及ぼす変化を多数のパラメータで特徴づけ、痙攣リスクを評価する方法である。これまでに我々は、異なる施設で取得したラット初代神経細胞のMEAのデータに対し、特定のパラメータを選択し主成分分析と多変量分散分析により解析することで、痙攣誘発化合物の痙攣リスクが検出可能であることを本学会で報告してきた。この解析法は痙攣発現の機序解明に利用できるほど精度は高いものの簡便に使用することができないため、利用場面は限られることが想定された。
本研究では痙攣リスクをより簡便に検出可能な解析方法を確立するため、MEA機器で自動算出可能な76パラメータに着目し、パラメータ算出に掛かる時間を短縮した。次にクラスター解析により、複数のデータを用いて痙攣リスク検出に寄与度が大きいパラメータを施設毎に抽出した。抽出されたパラメータの種類や数は施設間で完全に一致しなかったが、痙攣誘発化合物と非痙攣誘発化合物はクラスター解析でおおよそ分離することができた。さらにパラメータセットを予め選択することができればより簡便であると考え、前出のパラメータを多施設間で比較し、高頻度に選択されたものを共通パラメータセットとして採用した。このパラメータセットの有用性を検証するため、主成分分析及び多変量分散分析を行った。その結果、共通パラメータセットは検討に用いたいずれのデータにおいても痙攣リスクが検出可能であることを確認できた。本解析法の精度はこれまで実施していた主成分分析を主とした多変量解析法より劣っていたものの、スクリーニング試験などでは有用であると考えられた。